今日もまた、空は曇っていたが、雨までは降っていないようだった。
石畳の道にひらりと舞い降りると、背中にしがみついているフォーニが、小さく声を
上げた。
「も、もうちょっとゆっくり……」
数回ジャンプをしただけで、疲れ果てたかのように、力なく背中に横たわっている。
毛を掴む手の力も、残っていないのか。
「探し物を見つけるんじゃなかったのか?」
「……ゆっくり歩いてたって、見つかるよ」
言われてみれば、目的地もなく、当てもない。速く走ったところで、見逃すこともあ
りそうだ。
「それもそうだな」
ゆったりとした歩調で歩き出すと、フォーニは身体を起こして背にまたがった。
「わぁ……外に出るの、ほんとに久しぶり」
顔をきょろきょろさせ、その度に落ちそうになりながらフォーニは呟く。
「どうしてだ? 好きに出ればいいだろう」
「そういうわけにもいかないのよね……これが」
「変なやつだな」
「……妖精だからね」
幸い、というかなんというか、他の人間にも会わず、不思議な妖精を背に乗せたまま、
街を歩き回った。フォーニはといえば、見慣れぬ建物に感嘆の声を上げ、機嫌が良いの
か、歌まで歌い出す始末だった。
夜のとばりが辺りに暗い影を落とす頃、ようやく二人は――人間は、我々のことを一
匹と呼ぶが――見慣れた窓の前に立った。最後の跳躍に、必死になってしがみついてい
たフォーニは、名残顔で背から降りると、途端に険しい表情になる。
部屋の中を、一度だけ見たあの大きな人間がうろつき回っている。人間はフォーニを
見つけると、足早に窓に近づいてきた。
「またな」
振り返らずに言い放ち、再び夜の闇へと身を躍らせる。
――背中が軽い。
それが心地よいのか、それとも残念なのかは、自分でもわからなかった。
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